99.06.13

加 藤 静 夫

Shizuo Kato

インターネット佳句抄

轍 郁摩 抄出
旧作より、こころに残る作品を紹介

1991年
第19回 鷹新人賞作品より

顳かみに当たるを虻と気付くまで

泣けるだけ泣いてぶつかき氷かな

ねこじやらしほんとにぼけてしまひけり

笑ふやうに開く錠前や豊の秋

菊人形襟つかまれて運ばるる

秋深し土掘れば穴できあがる

うすらひに婚期おくれてしまひけり

真剣に恋して猫や文京区

椿寿忌の全員に日の当たりたる

籠枕より頭が落ちて未婚なり

泳ぎつくところ決まりてより泳ぐ

喰らふことすなはち子規の忌を修す


鷹新人賞「受賞のことば」より抜粋  長谷川等伯の「松林図屏風」が好きで、・・・・・・・・ 僕が俳句を始めたのは、その屏風に描かれた世界に憧れ、少 しでも近付きたかったからにほかならない。動機は極めて純 粋かつ風雅であったのだ。  それがどこでどう道を誤ったのか、等伯とは似ても似つか ぬ軽薄な句ばかり作るようになってしまった。実に無念では あるが、今しばらくは様子を見るしかなかろう。一体全体俳 句はぼくをどこに連れて行こうとしているのか。全くもって わからない。


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