1989.07

時空の砦

轍 郁摩

一夜百首歌なすことはたやすけれ然れども虚言に満つる辻占

生と死と銀かがよへる太刀魚の切られ売らるる温石(おんじやく)の街

飢ゑとほき日本生まれのライオンが獅子と呼ばるる檻錆びゆけり

男死に絶ゆる後華ひらく罌粟方舟「MORE」の種子きらびやか

契りおきし国の名知らずとぐろまく蛇ぬめやかにその身をほぐす

父と子の戦のごとし月満ちてまことしやかに菖蒲湯あふる

つひにわれ麻疹(はしか)知らざる一世なれ青き光芒額貫ける

レコード針降ろす寸前ためらへり「アトランティス」の黴のうすずみ

麦秋の真青の落雲雀天の暗黒視し報いとぞ

歌は歌なす枕詞がふつふつと時空の砦見上ぐるばかり


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Ikuma Wadachi