原発がどんなものか知ってほしい

原発がどんなものか知ってほしい(12)

平井憲夫

びっくりした美浜原発細管破断事故!

 皆さんが知らないのか、無関心なのか、日本の原 発はびっくりするような大事故を度々起こしていま す。スリーマイル島とかチェルノブイリに匹敵する 大事故です。一九八九年に、東京電力の福島第二原 発で再循環ポンプがバラバラになった大事故も、世 界で初めての事故でした。

 そして、一九九一年二月に、関西電力の美浜原発 で細管が破断した事故は、放射能を直接に大気中や 海へ大量に放出した大事故でした。

 チェルノブイリの事故の時には、私はあまり驚か なかったんですよ。原発を造っていて、そういう事 故が必ず起こると分かっていましたから。だから、 ああ、たまたまチェルノブイリで起きたと、たまた ま日本ではなかったと思ったんです。しかし、美浜 の事故の時はもうびっくりして、足がガクガクふる えて椅子から立ち上がれない程でした。

 この事故はECCS(緊急炉心冷却装置)を手動 で動かして原発を止めたという意味で、重大な事故 だったんです。ECCSというのは、原発の安全を 守るための最後の砦に当たります。これが効かなか ったらお終りです。だから、ECCSを動かした美 浜の事故というのは、一億数千万人の人を乗せたバ スが高速道路を一〇〇キロのスピードで走っているの に、ブレーキもきかない、サイドブレーキもきかな い、崖にぶつけてやっと止めたというような大事故 だったんです。

 原子炉の中の放射能を含んだ水が海へ流れ出て、 炉が空焚きになる寸前だったのです。日本が誇る多 重防護の安全弁が次々と効かなくて、あと〇・七秒 でチェルノブイリになるところだった。それも、土 曜日だったのですが、たまたまベテランの職員が来 ていて、自動停止するはずが停止しなくて、その人 がとっさの判断で手動で止めて、世界を巻き込むよ うな大事故に至らなかったのです。日本中の人が、 いや世界中の人が本当に運がよかったのですよ。

 この事故は、二ミリくらいの細い配管についている 触れ止め金具、何千本もある細管が振動で触れ合わ ないようにしてある金具が設計通りに入っていなか ったのが原因でした。施工ミスです。そのことが二 十年近い何回もの定検でも見つからなかったんです から、定検のいい加減さがばれた事故でもあった。 入らなければ切って捨てる、合わなければ引っ張る という、設計者がまさかと思うようなことが、現場 では当たり前に行われているということが分かった 事故でもあったんです。


  

原子力発電がなくても暮らせる社会をつくる国民会議
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