99.03.23

自句紹介

おもひのままに

轍 郁摩


鷹1990年1月号

芒山星の光のとどきけり

どこかに似たような俳句が有りはしないかといつも 心配になる。所詮、十七文字と季語。家中の歳時記 を広げまわし、例句に無いことを確認する。
鷹1992年3月号

       つら 鮟鱇の面と黄金バツトかな

ニ物衝撃は難しい。鑑賞者の記憶力によって極端に 衝撃度合が異なる。手術台の上のミシンとコウモリ 傘の出会い以後、おいそれとは首肯できない。
鷹1993年4月号

種袋さかさにあけてしまひけり

俳句とただごとの境界が未だに心もとない。しかし、 以前はこんな些細なことに心動かされるようなこと はまずなかった。
鷹1995年9月号

真剣は人切る重さ朴の花

金工の師から刀剣審査会場で「覚えておきなさい」 と柄を外す作法を見せてもらった。鍛えられた日本 刀は、明らかに美しい武器であった。
鷹1997年4月号

父よ寒きか肋一本失へば

父母の句は極力詠わない。しかし油断するとポロリ と現れてしまう。マイナスの自乗がプラスになるよ うな、父へのオマージュでありたい。


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